2015年11月

    713 : なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE [ウニ] 投稿日:2010/08/20(金) 23:53:59 ID:kFozVi3d0 [4/6回(PC)]
    ふいにカチャリという音が聞こえる。 
    地面に鍵が落ちている。ジーンズのポケットから落ちたらしい。屈んで手を伸ばし、拾ってあげる。 
    「すまんな、こんな状態で」 
    その人は窮屈そうに手のひらを広げ、受け取った。渡すとき、指先が触れてなんだか照れたような気分になる。 
    照れ隠しにそのまま指を折ってみせる。 
    「むっつですね。ここまでで」 
    「うん? ああ、七不思議か。そうだな。最後のひとつは面白いぞ」 
    面白い? それはオチ的なものだということだろうか。 
    「面白いというか、怪談として珍しいというのかな。こんな話だ」 
    そうして丁寧に話してくれた。 


    この団地には「なぞなぞおじさん」という怪談がある。 
    A棟の702号室にいるおじさんらしい。 
    どうしてなぞなぞおじさんなのかというと、読んで字のごとくなぞなぞが大好きなおじさんだからだ。 
    噂を聞いた子どもが702号室のドアの前に立って、コンコンとノックしたあとドアについている郵便受けをカタリと内側に押してから、部屋の中に向かって話しかける。 
    「おじさん、おじさん、クジラよりも大きくて、メダカよりも小さい生き物な~んだ?」 
    おじさんはなぞなぞが大好きだけど、なかなか答えがわからない。ずっとずっと考えている。ドアの前で待っていても返事はない。 
    仕方がないので引き返して自分の家に帰る。 
    答えはイルカ。そんなのイルカ! だからイルカ。こんなに簡単なのに、おじさんは分からないのだ。 
    子どもの住む団地の一室で、家族は寝静まり自分も部屋でもう寝ようとしているころ、玄関のドアをコンコンと叩く音が聞こえる。 
    家族が誰も起きないので、ベッドから這い出し、恐る恐る真っ暗な玄関に向かうと、コンコンとドアを叩く音が止まる。

     
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    708 : なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE [ウニ] 投稿日:2010/08/20(金) 23:41:34 ID:kFozVi3d0 [1/6回(PC)]
    大学四回生の冬だった。俺は仲間三人と少し気の早い卒業旅行をした。 
    交代しながら車を運転し、北陸まわりで関東へと入った。宿の手配もない行き当たりばったりの旅で、ビジネスホテルに泊まれれば良い方。どこも満室で、しかたなく車の中で寒さに震えながら朝焼けを見たこともあった。 
    目的はない。ただ学生時代特有の怠惰で無為な時間の中に、もう少し全身を沈めていたかった。みんな多かれ少なかれそんな感傷に浸っていたのだと思う。 
    ある街に着いた時、俺はふと思いついた。知り合いがこのあたりに住んでいたはずだ。 
    携帯電話で連絡をしてみると、懐かしがってくれた。一時間くらいあとで落ち合うことにする。 
    並木道がきれいに伸びている新興住宅地の中を通り、路肩に下ろしてもらい「終わったら連絡くれ」と言って去っていく仲間の車を見送る。 
    都心から離れるとあの、人であふれた息の詰まるような町並みよりも、空間的にずいぶん余裕がでてくるようだった。 
    カラフルな煉瓦で舗装された道を自然と浮き足立つステップで進み、大きなマンションが群れるように立ち並ぶ方へ目をやる。 
    マンションというより、団地か。そこへ向かう道は軽く傾斜し、丘になっている。 
    その団地の入り口に公園があった。広い敷地には、わずかばかりの遊具とたくさんの緑、そして住民が憩うためのベンチがいくつかあった。 
    そこにその人は座っている。 
    小春日和の温かい日差しに目を細めながら、こちらに手を振る。 
    俺は照れ隠しに大げさな動作で手を振り返し、ことさらゆっくりと歩いていった。 
    「え~と、元気でしたか。……多田さん」 
    なんだか面映い。ここ数日、砕けた仲間同士の掛け合いしかしてなかったので、口が滑らかに動かない。 
    元気だとその人は言った。 
    以前より少しふっくらしたようだ。髪の毛も伸ばしている。なにより、あの真摯で鋭かった眼差しが柔らかくなっている気がする。 
    ベンチの隣に座って近況を報告した。

     
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    482 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 16:07:33 ID:dIgiHSiJ0 [12/26回(PC)]
    "飼い犬" 

    ぼくはとても幸せだった。 
    おねえちゃんが一緒に居てくれた。 
    あんまり散歩には連れて行ってはくれなかったけど 
    帰ったらすぐにケージを開けて、いつも大好物のジャーキーをくれた。 
    ぎゅって、抱きしめてくれた。 

    ある時 
    おねえちゃんは久しぶりに散歩に連れて行ってくれた。 
    ぼくはおねえちゃんの緑色の車に乗るのが好きだ。 
    ドアに足をひっかけて外を見るのが好きだ。 
    お姉ちゃんはずいぶん遠くまで行ったところで 
    ぼくに首輪をして降ろした。 
    ここは神社というらしい。始めて来た。 
    たっぷり散歩してから、大好物のジャーキーを僕にくれた。 
    ぼくはとても幸せだった。 

    必死にジャーキーに噛り付いている僕に 
    おねえちゃんはすこし寂しい笑顔で言った。 
    「いい人に拾われるんだよ」 

    ぼくは不思議な顔をしてすこし見上げて、またジャーキーに夢中になった。 
    ぼくがぜんぶ食べ終わるころ、おねえちゃんはどこにも居なかった。 
    もう夕方だったので、誰も居なかった。 
    ぼくはとても寂しかった。

     
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    476 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 14:47:44 ID:dIgiHSiJ0 [8/26回(PC)]
    「ゲプッ…ゴチデシ…タ」  
    汚らしいゲップをかまして、謝意を伸べられる。 
    「オオ…ヒサシブリニ…」 
    ブルッ、と唇全体が震えたかと思うと 
    突然、周囲の雰囲気が変わり、部屋全体が大きく揺れだす 
    唇の上の空間に、直径1メートルほどの七色の渦が出現して、 
    そこから、唇に釣り合うでかい"鼻"が出現した。 
    満足そうに鼻腔を膨らませて"アレ"は 
    「コレガニ…オイカ…ナゼダカ…ナ…ツカシイデスネ」とかのたまう。 
    クソッ、また成長しやがった。 
    ショックだが…こればかりはどうしようもない… 
    …今回は、さすがに相手がでかすぎたんだろう。 
    女の子はさっきから妙に静かだと思ったら 
    座ったまま気絶していたようだ。 
    さすがに身体に侵食している霊を引き剥がされたので 
    心身ともに大きな負担がかかったのだろう。 
    "アレ"はまだ食べたりない、とばかりに黒い腕を伸ばして、 
    下見するように、軽く指先で女の子の身体の線をなぞる。 
    加護のない常人なら、触れられると服ごと焦げるのだが、そこは憑き護、 
    無傷のまま、指先から僅かに漏れた暗黒物質を吸収している。 
    ただ、意識はなくともさすがに不快感があるのか「ううっ」と小さく唸る。 
    「コノコノタマシイモ…タベテイイデスカ…ヨゴレテイナクテ…トテモ…ウマソウダ」 
    大事なクライアントを殺すわけにはいかない。 
    「ダメだ。無闇に魂を食うと、お前が困ることになるぞ」 
    「ザンネンデスガ…リョウショウシマシタ…マタノゴリヨウヲ…オマチシテオリマス…」 
    "アレ"はそう言って3点まとめて、右肩辺りまで引っ込んでいき沈黙した。 
    おかしい、なんでこんなに聞き分けがいいんだ。 
    微妙に滑舌も良くなっている気がする。 
    ドサッという音がして驚き、思考を止めると女の子が畳に突っ伏していた。 
    「おばあちゃん…」 
    小さく呟きながら、涙を流している。 
    思わず、居た堪れなくなり、ハンカチで拭ってやろうした。

     
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    473 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 14:44:50 ID:dIgiHSiJ0 [5/26回(PC)]
    …大枚に釣られてきてみれば、とんでもないものの相手をさせられる破目になったな。 
    こいつは、かなり異常だ。 
    この子の頭上に、所々ひび割れた小学校高学年の背丈ほどもある、オカッパの日本人形が鎮座している。 
    その人形の後ろ頭からは、腐ったブリキの兵隊が顔を覗かせ、足先には白い大蛇が巻きついている。 
    ひび割れた穴からは、時々何かが無邪気な目を覗かせたり、腐った手足が出入りしている。 
    心霊現象の見本市みたいなもんだ。 
    家神程度の、か弱い神霊も巻き添えで数体取り込まれているようだが…しょうがない。 

    おばさんから凡そは知らされていたが、この子は所謂"憑き護"ってやつに近い。 
    その体質ゆえに、今までの人生で関わってきたあらゆる他人の憑依霊や、 
    近くで起こった数々の心霊現象を吸ってきたのだろう。 
    おそらく、それが一つにまとまって、わけが分からないことになっている。 
    本来"憑き護"の能力キャパシティ内に収まるものなら 
    彼女の中で消化され消え失せるはずだが、何かが"蓋"をして塞き止めているようだ。 
    これでは吸い取った霊が消えずに、"憑き護"本人に被害が降りかかってしまう。 
    この子の声はまだ聞けていないが、眼を見る限り正気の澄んだ色をしていた、 
    これだけものを引き連れていて、よく心が壊れていないものだ。 
    「…じゃあ、いこう」 
    自分に号令をかけてから、右肩のお札シールを5枚まとめて剥がす。 
    "アレ"が発現する。いつもながらの黒い腕と上唇下唇のセットだ。 
    「ウア…ウ…マソウデ…ス…ネ…チイサナ…カミサマモ…タクサンイル…」 
    「まだ待て、少し様子を見よう」 
    「ウエヘヘ…オ…オヤサ…ンノオッシ…ャルトオリニ…」 
    大家さんとは言ったもんだ。珍しく言うことに従う"アレ"に少し気味の悪さを感じつつ 
    日本人形その他の複合霊と対峙する。

     
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    469 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 14:39:47 ID:dIgiHSiJ0 [1/26回(PC)]

    "守護" 

    私はYという。 
    この部屋に引きこもって4年になる。きっかけはいじめ。 
    とは言っても、世間一般に言われているような酷いものではなく。 
    小学校のときから長年「ウザイ」とか「キモイ」とか、 
    ちょくちょく言われ続けているうちに 
    なんとなく中3で心が折れてしまった感じだ。 
    今となっては、いじめっ子達にもとくに恨みはない。 
    まぁ、私は友達もまともに作れなかったし、 
    冷静に考えたら言われてもしょうがないかな、と思う。 

    「Yちゃーん、お食事ここに置いておくわよー」 
    お母さんが今日も、お夕飯を部屋の前に置きに来る。 
    いつも私は無言を貫くが、両親には本当に悪いと思っている。 
    懺悔をしながら、そおっと部屋の扉を開く。 
    やった、今日はトンカツだ。でも太るからなーどうしよう。 
    外との接点を持たなくなって長いのに、 
    こんなことを気にする自分が少し、可笑しい。 
    消化を良くする為に、少しずつ食べながら、 
    つけっ放しのPCのマウスを動かす

     
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    108 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/10/06(水) 02:03:15 ID:IDEoqkSf0 [1/2回(PC)]
    忘れもしない去年の秋。毎年恒例の温泉巡り一人旅。 
    その日は生憎の雨模様。止めようとも思ったが、折角予約したんだし宿に向かって車を走らせる。 
    すると雨の降る中、傘もささずに歩く女性の姿が・・・ 
    気になり、車を止め話しかけると、降りるバス停を間違え、此処まで歩いてきたとの事。 
    同じ宿に泊まると言うが、宿まで未だ距離がある。放って置く訳にも行かず乗せる事に。 
    宿に着き、女性は先に宿に入っていった。駐車場に車を置き俺も帳場に向かう。 
    既に女性の姿は無い。もう部屋に向かったのだろうと思った。 
    その日は天気も悪かったので他の客の姿が無い。仲居さんに、今日はお客さん少ないでしょう? 
    と聞くと、そうですね。こういう日もありますとの事。 
    結局、翌朝までに顔を合わせたのは仲居さんと布団を敷きに来た番頭と挨拶に来た女将だけ。 
    翌朝、チェックアウト時に番頭に、今日は何人位お客が居るのと聞いたら・・・俺だけだと・・・ 
    一瞬血の気が引いた・・・。番頭に、昨日、俺が帳場に行く前に、女性が来ただろう?と聞くと 
    番頭はギョッとした表情になり。忘れたほうがいいですと言いながら震えていた。

     
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    308 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 19:49:53 ID:lpNh7whZ0 [13/14回(PC)]
    師匠にも後日、いつものファミレスで同じようなことを言われた。 
    「もしかしたらSちゃん自身が、Aの思っている彼女とは少し違ったのかもしれないな。 
     何かのきっかけで彼女自身が"似たようなもの"と入れ替わったとしたら、 
     必然的にその後のAと彼女の運命というか、在りようが変わってしまうことになる。 
     Aの話を聞く限り、たぶん彼女は"人形"ではないとは思うんだが…」 
    ここにも韓流ドラマの被害者がwwwwと思ったが、 
    錯乱して"アレ"に突っ込んで迷惑かけた件もあるし、色々と助けてもらったので、 
    あえて黙っておいて、勘定も大した額ではなかったが全て支払った。 

    最近風の便りで、Sちゃんは良い仕事の引き合いがあったので、 
    娘と遠くの街へ引っ越したと聞いた。 
    回復したころに、病院に見舞いに行きたかったのだが、 
    色々あって引き伸ばしにしている内に、彼女は退院してしまっていた。 
    繁華街ですれ違ってから、結局一度も現実のSちゃんとは話すことは無かったわけだ。 
    幸せでやっているのかは分からないが、、 
    おかんの語った"男の子"が彼女を守っているという、 
    部分が当たっていたらいいな、と思っている。

     
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    305 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 19:45:49 ID:lpNh7whZ0 [10/14回(PC)]
    特に進展も無いまま、数ヶ月が経ち、 
    梅雨に入って蒸し暑くなったころだろうか、その夜は夢を見ていた。 
    内容は"町で旨いラーメン屋を見つけて喜ぶ俺"みたいな平和なものだった。 
    ハッピーな気分で、黄金色に輝く超旨いラーメンを啜っていたら 
    "グニュウウウウ"と空間を歪めて河童神が店に、というか夢に入り込んできた。 
    乱入はいつものことなので「またおまえか」とか 
    「ニヤニヤすんな、カエレ!!」とか文句を垂れていたら 
    ラーメンが茶色い、言いたく無い何かに変わった挙句、 
    河童神が入ってくるために空けた空間に、手を引っ張られて連れ込まれた。 
    そのまま夢の場面が変わったようで、河童神は消え失せ 
    いつのまにか俺は、Sちゃんと、どこかで見たことのある男の子とで食卓を囲んでいた。 

    ナイフとフォークを持ったまま固まった彼女が、口だけを動かして俺に訴えかけてくる。 
    「ねぇ助けてよ。この子は私の子じゃない、でも私とあなたとの子なの。 
     夫が死んでから夢に出てくるのよ。あなたと私がこの子を囲んで食事するの」 
    いやそんなこと言われても、避妊は間違いなくしていたし、まったく身に覚えがございません。 
    そう反論しようとしたら、さらに畳み掛けられる。 
    「ずれてしまったの、何もかもが取り返しがつかないほどに離れてしまった…」 
    わけが分からなくて絶句していると、 
    また場面が変わる。 

    どしゃぶりの雨の中、道の真ん中で女性が倒れていて、その側で女の子が泣いている。 
    俺は倒れている女性の少し上に浮いていて、 
    何もできずに、見つめ続けることしかできない。 
    そこで唐突に夢が途切れ、目が覚めた。 
    何かただ事ではない感じがしたので、師匠に電話をかけると、 
    眠れなくて起きていたらしく、車ですぐにかけつけてくれた。 
    夢で見たのは、市内の見覚えのある場所だったので 
    車の中で師匠に、これまでのSちゃんとの経緯を話し終えたころには、 
    たどり着くことが出来た。

     
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    302 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 19:41:35 ID:lpNh7whZ0 [7/14回(PC)]
     
    "運命" 

    Sちゃんは、小学生のときに病気でお父さんが亡くなっていた。 
    そんなに美人ではなかったが元気が良く目立つタイプで 
    お父さんが亡くなってからは、何事にも努力を惜しまないようになり 
    元々の人懐っこく、裏表のない性格にもさらに磨きがかかり 
    とても周りから好かれるようになっていた。 
    俺らは中二まではクラスも同じで、仲も結構良かった。 
    恋心に気付いたのはそのころ。マセた最近のガキにしては遅れた初恋だった。 
    中三のときにクラスは分かれて、高校は別々に進学した。 
    勉強を頑張っていた彼女は市内トップの進学校、 
    適当な俺は偏差値そこそこの公立普通科高校。 
    高校生活にも慣れ、バイトなんかにも手を染めて 
    たぶん、このまま忘れて行くんだろうと思っていた矢先 
    彼女から呼び出され、突然の告白を受けた。 

    「ねぇ、付き合おっか」

     
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