713 : なぞなぞ ◆oJUBn2VTGE [ウニ] 投稿日:2010/08/20(金) 23:53:59 ID:kFozVi3d0 [4/6回(PC)]
ふいにカチャリという音が聞こえる。
地面に鍵が落ちている。ジーンズのポケットから落ちたらしい。屈んで手を伸ばし、拾ってあげる。
「すまんな、こんな状態で」
その人は窮屈そうに手のひらを広げ、受け取った。渡すとき、指先が触れてなんだか照れたような気分になる。
照れ隠しにそのまま指を折ってみせる。
「むっつですね。ここまでで」
「うん? ああ、七不思議か。そうだな。最後のひとつは面白いぞ」
面白い? それはオチ的なものだということだろうか。
「面白いというか、怪談として珍しいというのかな。こんな話だ」
そうして丁寧に話してくれた。
この団地には「なぞなぞおじさん」という怪談がある。
A棟の702号室にいるおじさんらしい。
どうしてなぞなぞおじさんなのかというと、読んで字のごとくなぞなぞが大好きなおじさんだからだ。
噂を聞いた子どもが702号室のドアの前に立って、コンコンとノックしたあとドアについている郵便受けをカタリと内側に押してから、部屋の中に向かって話しかける。
「おじさん、おじさん、クジラよりも大きくて、メダカよりも小さい生き物な~んだ?」
おじさんはなぞなぞが大好きだけど、なかなか答えがわからない。ずっとずっと考えている。ドアの前で待っていても返事はない。
仕方がないので引き返して自分の家に帰る。
答えはイルカ。そんなのイルカ! だからイルカ。こんなに簡単なのに、おじさんは分からないのだ。
子どもの住む団地の一室で、家族は寝静まり自分も部屋でもう寝ようとしているころ、玄関のドアをコンコンと叩く音が聞こえる。
家族が誰も起きないので、ベッドから這い出し、恐る恐る真っ暗な玄関に向かうと、コンコンとドアを叩く音が止まる。
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