543 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:05/03/11 19:14:54 ID:OLQSATCQ0[1/5回(PC)]
子供の頃、夏のお祭りに『見世物小屋』の興行がありました。『見世物
小屋』と言っても、みなさんが期待するような『身体障害者を晒し物にす
る』のではなくて、健常者が妖怪に扮装して見物客を脅すという内容でし
た。つまり、ただの『お化け屋敷』です。
掘立て小屋の正面には、おどろおどろしい絵と描き文字で「恐怖、満月
の狼男!」「フランケンシュタインは実在した!」「蛇女、現る!」と描かれ
た看板が立ててあり、下世話な好奇心を煽り立ててくれます。私は親の
反対を押し切って、友人たちと一緒に見世物小屋に入りました。
小屋の中は仕切り壁で作られた部屋がいくつも並んでいて、見物客は
順路に沿って鉄格子の隙間からそれぞれの部屋を覗いていくという、本
当にただの『お化け屋敷』でした。(本当の『見世物小屋』は、サーカスの
ように観客席と舞台があり、フリークスたちが舞台の上で芸を披露する)
それぞれの部屋の鉄格子の向こうに、付け髭が半分浮いている狼男
や短身小太りのフランケンシュタイン、ニシキヘビを首に巻く中年蛇女が
いました。彼らのいかがわしさはどこかユーモラスで、特に中年蛇女は
「おまえら全員、頭から飲み込んでやるぞッ」と脅してくるくせに、私たち
が鉄格子の隙間から手を入れて蛇の頭を触ろうとすると、「噛まれるか
ら触っちゃだめッ!」と注意してくれる優しい方でした。私たちはニコニコ
と笑いながら見物することができました。